2012年12月10日

応用科学 Robert Bud. 2012. "Introduction." Isis 103: 515-517.

Robert Bud. 2012. "Introduction." Isis 103: 515-517.

科学は、イデオロギーと呼ばれるものとは似ていないかもしれないが、科学についての語りは、イデオロギーと呼ばれるものとしばしば似ている。この特集では、「応用科学 applied science」「純粋科学 pure science」「技芸 art」「科学技術 technology」といった言葉が使われてきた過程や、こういった言葉の意味が議論され、変化してきた過程に注目する。この特集は、2009年の科学史学会の年次総会で行われたセッションから生まれた。

社会は「応用科学」「純粋科学」「技芸」「科学技術」などといった言葉によって科学を管理してきた。またこのような分類の仕方は、知識と活動の境界や、文化的あるいは経済的資源の配置などについての公共圏での議論を促進してきた。

分類の仕方自体についても公共圏で議論がされており、それは科学と社会に関わる様々な諸相を映し出している。過去には、歴史家たちはこういった議論をあまり扱ってこなかった。しかし、このような議論について調査することは、単に言葉の装いを観察することとは違うのだということを、我々はますますよく認識するようになってきた。

政治哲学者のスキナーは、言葉の用法がどのようにイデオロギーを支えるかについて調査してきたが、彼の研究は科学史の分野ではあまり引用されていない。ドイツ語圏で概念史(begriffsgeschichte)を提案しているコゼレックなども、概念として機能する言葉の組に固有の性質を調査してきた。リヒターやパロネンなどによるこの分野の豊かな発展は、示唆に富んでおり、この特集の更に先へと進む調査を喚起するだろう。この研究が焦点を当てる根本的な問題は、現象の変化する姿や、現象を捉えようとする概念の歴史性、そしてこれらの概念を表現する言葉の意味の曖昧さだ。

概念史のキーコンセプトは、概念を近隣の考えたちとの地図の中に位置づけようというものである。そこで、この特集の5つの論文では「応用科学」「純粋科学」「技芸」「科学技術」といった概念について、18世紀から20世紀にかけてのイギリスとアメリカを対象として調査する。これらの言葉は語源学によって解明されるが、しかし語源学に還元可能なものではない。

アレキサンダーの最初の論文は、フォアマンの最近の論文に焦点を当て、シンポジウムの焦点となる問題と時代をフレーミングする。次のルーシャの論文は、ローランドの1883年の講演「純粋科学の請願」を文脈に入れ、「純粋」「応用」という言葉の意味を調査する。筆者(バッド)自身の論文は、「応用科学」という言葉と概念が、いかにしてフランス語とドイツ語からの翻訳を経てイギリスに持ち込まれ、混成されたかを示す。さらにグッディは、T.H.ハクスリーが1880年に「応用科学」に対して警告を発した講演「科学と文化」を踏まえ、19世紀後半から20世紀初頭のイギリスでの「純粋科学」「応用科学」の語の振興を、新しく専門職業化した科学者たちによる自己拡大の過程として論じる。最後にシャッツバーグは、「技芸」と「科学」の対話がいかにして「純粋科学」と「応用科学」と「科学技術」の対話に道を譲ったかという問題に焦点を当てる。

これらの論文は、科学史の公共圏に貢献することを意図しており、これらが学識ある旺盛な議論を促進することがあれば幸いである。

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