2023年10月8日

生物が主役の生物学史 Endersby, A Guinea Pig’s History of Biology, Preface and acknowledgements

Jim Endersby, A Guinea Pig’s History of Biology (Cambridge, MA: Harvard University Press, 2007), IX–XII.

序文と謝辞(IX–XIIページ)

 過去200年における生物学の発展は目覚ましいが、これはショウジョウバエやモルモット、トウモロコシなどといった生物が、遺伝という生命の最大の謎の一つを解明する手助けをしてくれたおかげである。
 こうした生物たちを検討することで、我々がどのようにしてここまで来たかについての異なった理解や、我々がどこへ行くのかについての新しい考え方がもたらされるだろう。偉大な科学者ではなく生物たちの物語を描くことで、科学を可能にしてきたさまざまな種類の仕事を理解することができる。実験に使う生物を準備するには数ヶ月あるいは数年もの時間がかかることがある。科学は、輝かしい洞察を得ることであるのと同じぐらい、資金集めや細かい計画立案でもある。単独で働いていた科学者はきわめて少なく、ほとんどがさまざまな仕方で、同僚や競争相手、先生や生徒、技師や助手、そして何より先行者に頼っていた。
 生物学史は我々に、科学がどのようにして作動するのか、そして生物の多様性や複雑性、本性についてどのような答えを出すのかを理解させてくれる。この本で注目する生物を選ぶにあたって、著者はこの物語に貢献したすべての生物を挙げようとしたわけではなく、むしろ、ショウジョウバエのような有名なものからマツヨイグサのように今ではその役割がほとんど忘れ去られてしまったものまでを取り混ぜるようにした。また、いくつかの重要な生物を割愛せざるをえなかったが、それでも生物学研究の多様性と、生物学が過去200年のあいだにどれだけ変化したかがわかるだろう。
 ロバート・コーラーの『ハエの王たち――ショウジョウバエ遺伝学と実験的生活』(Lords of the Fly: Drosophila Genetics and the Experimental Life)は、遺伝学者たちではなくショウジョウバエを主役とした。コーラーは「ハエに従う」ことで、これまで歴史家たちに見過ごされてきた問題を検討することができた。
 フランスの社会学者ブルーノ・ラトゥールやミッシェル・カロンのアイデアに刺激を受け、コーラーだけでなく、近年の科学史家たちは生物に注意を向けている。この本ではそうしたアプローチを活用して、生物学の歴史、特に遺伝と遺伝学の歴史を描いた。

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