2015年2月5日

人種的思考の歴史、再考 Seth, “Introduction”  【Isis, Focus:人種】

2月6日のIsis, Focus読書会では、2014年第4号の「人種」特集を扱います。
詳細は以下のページをご覧ください。オンライン参加も歓迎です。
https://www.facebook.com/events/1522913594653257/?ref_dashboard_filter=upcoming

以下は、特集のイントロダクションのレジュメです。


Suman Seth, “Introduction,” Isis 105 (2014): 759–763.

 Nancy Stepanの『科学における人種概念 The Idea of Race in Science』(1982)が描いた人種概念の歴史は、ディシプリン、地域、時代の三つの軸において偏りがある。ディシプリンの軸では、多くの人種科学者が医者であったにもかかわらず、もっぱら科学者を論じており医学の領域を扱っていない。地域の軸では、他人種と日常的に接触していた地域の人々を扱わずに、ヨーロッパの大都市にいた学者たちに焦点を当てている。時代の軸では、1800年から1960年のあいだを扱っているが、実際には人種科学の起源は遅くとも18世紀にあるし、またゲノム時代の人種概念も新たな展開を見せている。
 そこで本特集の論考はどれも、この三つの軸の少なくともどれか一つにおいて、「人種」を位置づけなおす。たとえばSeth自身の論考は18世紀の西インド諸島における「人種」を検討する。だが本特集は、ヨーロッパの大都市において科学者たちがつくった人種的思考が、周縁的地域や新しいディシプリンにおいてどのように変化(適応)していったのかを探るものではない。また、時代や地域によって人種的思考もさまざまであるという当たり前のことを確認しようというものでもない。そうではなくて、異なるディシプリン、地域、時代が、どのようにして、異なる人種的思考の表現を要請し形成したのかを探ろうというのが本特集の意図である。そうすることで、19世紀ヨーロッパの人種科学を生んだ条件についても考え直すことができるのである。

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