2013年3月31日

ライエルとオーヴェルニュの地質学 Rudwick, Worlds Before Adam, Ch. 18

Worlds Before Adam: The Reconstruction of Geohistory in the Age of ReformWorlds Before Adam: The Reconstruction of Geohistory in the Age of Reform
M. J. S. Rudwick

Univ of Chicago Pr (Tx) 2010-05-15
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Martin J. S. Rudwick, Worlds Before Adam: The Reconstruction of Geohistory in the Age of Reform (Chicago: University of Chicago Press, 2008), 253-66.


Ch.18 ライエルとオーヴェルニュの地質学(1827-28)

18.1 スクロープのオーヴェルニュ研究とライエル

ライエルは『クォータリー・レヴュー』の最後の連載(1827)において、スクロープの新しい本『中央フランスの地質学についての報告』(1827)をレビューした。スクロープは、過去幾度も繰り返された火山の噴火によってできた地形は、河川による絶え間ない侵食の歴史を示していると考えており、大洪水も海の侵入も否定していた。ライエルもスクロープの見解を支持し、さらにそれをスクロープが言及していない生命史の領域にまで拡張した。ライエルは現在因を地質学的説明に用いることに自信を見せ、多くの地質学者を、現在の地球上の法則を無視して説明のつかない現象に頼っているとして非難した。
スクロープやライエルは長大な時間を想定したことで、人間はかなり後になって登場した存在となり、世界における人間の地位を脅かしてしまった。しかしライエルによれば、人間は理性を持っており、それによって人類以前の太古の歴史まで知ることができるのだから、人間がこの世界で重要な存在でないということにはならない。
なお、ライエルのこのレビューについて、師であるバックランドは反対しなかった。

18.2 地質学の改革者としてのライエル

ライエルのこのレビューは、新しく書こうとしていた本の予行演習でもあった。この本は当初は一般向けを想定していたが、ライエルは考えを変え、地質学を改革するような高いレベルの本を目指すことになった。ライエルはこの本で、過去における原因は現在因と同じであることを強調し、現在因の使用を推進するつもりであった。ライエルによれば、過去と現在の原因は同じと考えるのが普通であって、立証責任はそれらが異なると考えている人々の側にある。しかし、物理法則の場合と複雑な地質学的法則の場合とでは事情が異なるという批判もあった。なお、ライエルは聖書に基づく見解の人々と一緒くたにされないように、「現在因」にactual causesではなくmodern causesなどの言葉を用いていた。
1828年の春に、ライエルはマーチソン夫妻と共にフィールドワークに行く機会を得た。その旅程では、最初にフランスの中央高地に行くことになっていた。

18.3 ライエルの目で見たオーヴェルニュ

ライエルはロンドンを発つ前から旅先の地域に関連する研究を集めて勉強していたし、パリでは現地の地質学者から情報を集めていた。また、地元のナチュラリストの協力に依存していた部分も大きかった。それゆえ、ライエルらは自分たちの目で調査地域を見たときにも、すでに他の研究者の影響を受けていた。最初の調査地域であるオーヴェルニュでライエルは、スクロープや現地のナチュラリストであるクロワゼやジョベールが書いてきたこと(おだやかな侵食作用が働いていること、化石の動物相の変化がゆっくりであること、大洪水を示す証拠がないことなど)の正しさを認めた。
オーヴェルニュを発った頃のライエルのノートには、地質学の説明における歴史的思考の必要性について書かれている。その例としてライエルは、多くの街が山の上に作られているのはむかし敵に攻められにくいようにしたからであり、ある谷間が不毛の岩でいっぱいなのはむかし溶岩が流れてきたからだと述べている。
また、キュヴィエによる絶滅の説明(突然の海の侵入)を否定した代わりに、生物種には個体と同じように、理由はわからないが本質的に定まった寿命があるのではないかというブロッキのアイデアについて書いている。

18.4 結論

ライエルのこの調査旅行は、ダーウィンのビーグル号航海にも相当する重要なものであるため、このあとに続く2章の大部分もここに費やすことにする。

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