2013年3月21日

『植物の変異と進化』第1章 Stebbins, Variation and Evolution in Plants, Ch. 1

Variations and Evolution in Plants (Biological)Variations and Evolution in Plants (Biological)
George Stebbins

Columbia Univ Pr 1950-06
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G. Ledyard Stebbins, Jr., Variation and Evolution in Plants (New York: Columbia University Press, 1950), 3-41
Ch. 1 Description and Analysis of Variation Patterns 

進化学者は生物の分類体系を知らなければならない。しかし生物の分類は、変異する形質の数が多すぎるために簡単ではない。そこで体系学者たちは、鍵となるような形質に注目して分類を行う。標本整理だけのためならこれで十分だが、進化に目を向ける体系学者は、次の3つのことをしなければならない。1つ目は他の形質にも目を配ること、2つ目は形質や形質間関係の変異を量的に測定すること(統計学や生物測定学の方法が理想的)、3つ目は変異パターンの原因となる要素を部分的にでも分析すること、特にどのくらいが環境要因でどのくらいが遺伝要因なのかを知ることである。このためには、遺伝学、細胞学、生態学などから知見を集結しなければいけない。

1つ目(pp.8-13)。維管束植物の分類は従来、外的な形態学に基づいてきた。しかし進化学の目的のためには、解剖学的、組織学的、細胞学的な形質にも着目する必要がある。こういった研究が進化学・系統学に役立つことは、先行する多くの業績の例から確かめられる。組織学的、細胞学的な形質は、伝統的な方法である外的な形態学や花序よりも正確な類縁性を示し、系統決定に役立つ。花粉粒や、表皮、特に厚壁細胞の研究が良い例である。染色体、血清診断、地理的分布や生態学的関係性などの知見も生かさなくてはいけない。倍数性の研究は、外的な形態学や地理的・生態学的分布と結び付けることで、進化のプロセスの仮説を立てることができる。

2つ目(pp.13-21)。記述的な体系学においても、変異を量的に測定しなければいけない。ある種類の形質はランダムだが、ある種類の形質は地理的パターンとの規則性があるだろう。効率的に情報を得るために3つの方法が多く試みられており、①分布に地理的規則性がある1つ2つ程度の形質に注目する方法、②形態学的形質間の関係性を図表や統計学的手法で研究する方法、③少ないサンプルでできるだけ多くの形態学的・生理学的形質を研究する方法(pp.20-21)である。植物園のサンプルは、その採集方法等の問題で十分適さない場合があり、local population sampleと呼ばれるようなサンプルが良い。データの処理では、平均、標準偏差、変動係数、カイ二乗検定などが用いられる。図表や写真の用い方にも工夫ができる。

3つ目(pp.21-27)。変異パターンの分析では、高等植物に対して主に移植、後代検定、人工交雑などの方法が用いられている。大きかったり長寿だったり高価だったりする樹木等はこういった方法が難しくなるが、自然の自発的な実験を参考にすることができる。すなわち、2つの近縁な種が同じ地域に存在し、かつ中間的な個体がなければ、2つの種のあいだに隔離メカニズムが働いていることになる。

変異に関して、理解しておかなければならない原則がいくつかある。まず、変種、亜種、種、属などといった分類学的な存在は、単純なひとまとまりの単位ではなく、集団の複雑なシステムである。次に、どんな集団も、ある形質については一定で、一方である形質については不定である。そして、集団どうしの間には特定の形質について不連続性がある。 

この他に、pp.28-29では変異の研究を、地学研究のアナロジーで説明しています。pp.32-41では、変種、亜種、型、種といった分類学用語や、ホモ、ヘテロ、生物型、純系、集団といった遺伝学用語について説明しています。

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